複数のアカウントや複数のメールアドレスを設定してARENAを利用する場合には、お使いのプロバイダーがメールサーバーのセキュリティに対してどのような方針を取っているのかを正しく理解する必要があります。設定によっては、メールが送信できないということがあり得るからです。
以下では、ダイアルアップのプロバイダーを例に、主にメール配送時におけるセキュリティの問題について解説します。複数のアカウントや複数のメールアドレスを使っている方は、ここで説明する内容をよく理解するようにしてください。
■SMTPとPOPの違いを再確認
まず、インターネットメールを使うには、2種類のサーバーを利用している、ということを再確認してください。メールを「送信」するときには「SMTPサーバー」、メールを「受信」するときには「POPサーバー」という種類の、別の種類のサーバーを利用します。
一般には、これらの2つのサーバーは同じコンピューター上で動作していることが多く、ひっくるめて「メールサーバー」と呼ぶことも多いのですが、「送信」と「受信」には別々のサーバーソフトを使っているのだということを理解してください。
もしこの話題について理解に自信がなければ、検索サイト(GooやInfoseekなど)で、「電子メール」「しくみ」「SMTP」「POP」などの言葉を複合検索してみてください。Web上には親切なガイドがいくつか公開されています。
■SMTPサーバーの利用制限を理解しよう
ARENAがメールを送信するときには、現在の「サーバーセット」で選択されているSMTPサーバーに接続して、送信を依頼します。ですが、お使いの環境やARENAの設定によってはSMTPサーバーが送信作業を受け入れてくれないことがあり得ます。
多くのプロバイダーは、SMTPサーバーの不正な利用を防ぐために、各種の利用制限をかけているからです。
SMTPサーバーをどのような方針で運営しているかは、お使いのプロバイダーの方針によりますので、詳しくはプロバイダーのサポート窓口までお問い合わせいただきたいのですが、以下では、一般的な事例について説明します。
1. 別のプロバイダーから接続するとSMTPサーバーが利用できない例(IPアドレスによる制限)
このタイプのプロバイダーでは、そのプロバイダーのアクセスポイントに接続しないとSMTPサーバーを利用できないように制限しています。具体的には、PPPアクセス時に与えられるIPアドレスの範囲によって、SMTPサーバーの利用を制限するものです。
これが原因になってメールが送信できない場合には、使いたいSMTPサーバーを提供しているプロバイダーに接続し直すか、サーバーセットを切り替えて、現在接続しているプロバイダーのSMTPサーバーを利用するようにしてください。
※ただし、そのSMTPサーバーのローカルでメール配信が完了する場合には、この制限は適用外となります。そのため、この例が原因でメールが送れない場合には「メールが送れたり送れなかったり」することがあります。
2. メールのFrom: またはTo: がそのプロバイダーでないとSMTPサーバーが利用できない例(ドメイン名による制限)
多くのプロバイダーでは、そのプロバイダーのドメイン名に関係のないメールの配送を行いません。つまり、送信人か宛先人にそのプロバイダーのドメインが書かれていなければ、SMTPサーバーは送信を受け付けません。
ARENAでは、差出人を自由に設定することができますので、この制限にひっかかってメールが送れないことがあり得ます。そのようなときには、差出人をSMTPサーバーを提供しているプロバイダーのドメインのものに設定するか、もしくはサーバーセットを切り替えて別のSMTPサーバーを利用するようにしてください。
3. 別のプロバイダーからの接続でもSMTPサーバーが利用できるが、送信前にPOP認証が必要となる例(POP認証による制限)
最近増えているのが、ユーザー認証を行えば、上記の1)や2)のような制限がないプロバイダーです。つまり、正規のユーザーであることがわかれば、どこからどのような設定で送ってもいいではないか、という方針です。
こうしたプロバイダーでは、1)と違ってそのプロバイダーからの接続でなくてもSMTPサーバーが利用できますが、その際にはPOPサーバーに一度接続してユーザー認証を行い、その後すぐに(通常は認証後数分の間に利用が有効となる)SMTPサーバーを利用する、という手順を取ります。
ですから、このタイプのプロバイダーの場合、POPサーバーの認証ができていない段階で、他のプロバイダー経由でメールを送ろうとしても、このSMTPサーバーは受け付けてくれません。この場合には、ARENAの「すぐに送信」(即時送信)ではなく、一度「送信待ちに入れる」を行って、「メールをチェック」を実行してください。「メールをチェック」コマンドは、まずPOPサーバーに接続してユーザー認証を行い、メールがあれば取得して、さらに送信待ちメールがあればそれらを送信します。
4. 上記の条件が組み合わさった例
プロバイダーによっては、上記の1)〜3)を組み合わせた、セキュリティに配慮したところもあるかもしれません。上記の説明をよくご理解のうえ、適切な方法でメールの送信を行ってください。必要に応じてプロバイダーの方との相談も必要かもしれません。
■ POPサーバーの利用制限
POPサーバーの利用には必ずパスワードによるユーザー認証を伴いますので、アクセス元などによる利用制限はSMTPと違ってシンプルなのが普通です。一般に、そのプロバイダーのアクセスポイントからの接続でなくても、POPサーバーの利用を認めているケースが多いようです。
■ 参考資料
以下の内容は、1999年3月の時点で調査したものです。
ODN
ODN外部からメールを受信することはできるが、ODN外部からODNのメールサーバーを利用してメールを送信することはできない。
So-net
So-net以外のネットワークから、So-netのSMTPサーバーを使ってメールを送信する場合は、送信前に必ずメール受信操作を行って、POP認証を受ける必要がある。 送信は、受信操作後10分以内に行う必要がある。
DTI
外部からのPOPサーバーへの接続を許可している。
IIJ4U
IIJ4U以外のアクセスポイントに接続し、IIJ4Uのメールサーバからメールを送信する場合には、送信する前に受信操作による認証を行う必要がある。
ASAHIネット
SMTPサーバーをASAHIネットのアクセスポイント以外から利用することはできない。POPサーバーは、ASAHIネットのアクセスポイント以外に、社内LANや他のドメインからも利用できる。
ドリームネット
ドリームネットのSMTPサーバーは、他社プロバイダーのアクセスポイント経由やLAN経由では利用できない。
Internet Jah
Jah以外のプロバイダーより接続し、Jah以外のメールアドレスを使用してJah以外の宛先にメールを送ろうとした場合はメールの配送を拒否する。
東海インターネット
東海インターネットのアクセスポイント以外から接続し、東海インターネットのメールサーバーを利用してメールを発信することは、差出人の詐称など不正な行為と区別がつかなくなるので、原則としてこれをできなくしてある。
アットエム
内部・外部を問わず、メールのFrom: またはTo: に at-m.or.jp と記述されているもの、または、メーリングリスト転送サービスなどにより、at-m.or.jp というドメインに対して向かってくるものは、メールサーバーを利用できる。外部よりのメールで、 From: 及び To: のどちらにも at-m.or.jp と記述されていないもの(中継のみを行う場合)はメールサーバーを利用できない。